わずか90分足らずの時間で、幾多のスタートレックファンが達した境地、いわばスタートレックファンの神髄に迫ろうという意欲的なドキュメンタリーである。人間はかくも愛すべき奇妙な行為に及びながら、正々堂々と前向きに自己実現しようとするものなのか、と感じ入る。「トレッキーズ」（もしくは「トレッカーズ」）とは、コンベンション（ファンの集い）にしか自分の居場所を見出せないオタクや人間嫌いや、はみ出し者の集まりにすぎないのか？ 本作では楽しいエピソードをふんだんに、そんな固定観念が正しくもあり、同時にひどく近視眼的でもあることを明らかにして見せる。ここで紹介される人々が変人であるかどうかは受け取る側次第だというわけである。彼らを受け入れることなど、現代の地球にあってジーン・ロッデンベリーの仮想未来「惑星連邦」に生きる架空の住人たちを受け入れられるなら、同じくわけないはずだ。我々のアプローチは彼ら熱狂的ファンよりまともだ、などと誰が断言できようか。
監督はロジャー・ナイガード、進行役はデニス・クロスビー（スタートレック   「新スター・トレック」のターシャ・ヤー役）という素晴らしい顔合わせで、スタートレック第1シリーズの全キャストに加え、第2シリーズ以降の役者も数多くインタビューに応えているのも見どころ。しかし、この作品の真の主役は何と言っても熱狂的なファンたちであり、彼らに注がれるのは興味津々ながら戸惑いと尊敬の念が入り混じる、偏りのない視線である。確かにいささか異様な存在ではあるが、そうした根強いトレッキーズたちを必要以上に持ち上げているわけでもない。とはいえ、クロスビーとナイガードは過去のスタートレック関係者同様、驚くほどの愛情をもって彼らに応えている。
   1996年から1997年にかけ、数々のロケ地やコンベンションに赴いて撮影を続け、実に多くのトレッキーズ、トレッカーズの姿を追った。皆、スタートレックシリーズを愛し、シリーズが生み出した文化を愛する、ごく普通の人たちである。
   観る者の心弾む、配慮の行き届いた盛りだくさんな内容に笑いもたっぷりの本作は魅力ある作品に仕上がっており（ファンに媚びないことを条件にパラマウントが製作を認可）、スタートレックのファンはもちろん、ファンならずとも楽しめることうけあいの作品である。予定されている続編が待たれるところである。（Jeff Shannon, Amazon.com）