ピンクのヒトデが祝いのペナントを尻に挟み、人混みの頭上をパラセーリングで飛んでいく――こんな素晴らしい見せ場のある映画が果たして何本あるだろうか？ このシーンはほんの一例に過ぎない。『スポンジ・ボブ スクエアパンツ ザ・ムービー』には、アニメならではの破天荒な笑いが詰まっている。小さなヒーローたちがネプチューン王の失われた王冠を奪還しようと危険な旅に出ると、シュールな展開がぞくぞくと待ち受けている。捕まってしまったスポンジボブ(声優はトム・ケニー)はピーウィー・ハーマン風に逮捕された若者で、“カニ風パイ”というメニューのあるファストフード店(オーナー自身がカニなのだが、どんな材料で料理を作っているのかは明らかでない)の店員だ。彼の親友で岩の下に住むパトリック・スターフィッシュ(声優はビル・フェイガーバック)は、少々IQが低いが、2人は友情を武器にして数々の試練を切り抜け、勇敢であろうとする。リアルな世界観を求める向きは失望するかもしれない。本作は水中で繰り広げられる冒険物語だが、火があがったり、空気が存在するような描写が見受けられるからだ。ようするに、ギャグに都合がよければいいのだ。ジョークはおもしろいというよりばかげた性質のものが多いが、ストーリー展開にエネルギッシュな楽しみがあることは間違いない。声優としてスカーレット・ヨハンソン、ジェフリー・タンバー、アレック・ボールドウィン、そして出番たっぷりのデビッド・ハッセルホフらが登場する。(Bret Fetzer, Amazon.com)